『愛のうた』

パトカーに乗せられる夢をみる。無限の時間を突きつけられる。無何有郷の牢獄に収監される。人を殺した、人を殺した、と嘯くと皆に嫌な顔をされる。社会から隔絶され、野垂れ死ぬ自分を俯瞰する。待ってましたと野犬が這いより、四肢を食いちぎられ、臓物を掻き混ぜられながらアナタは死ぬことばかり考えているの? 死ぬなんて言っちゃダメ、ワタシだけはアナタの味方よ、どんなアナタでも愛してあげる、と囁いた天使は、手術により奇跡的に一命を取り留めた僕を見て、ちぐはぐに継ぎ接ぎされた身体を見て、どうやら逃げ出しちゃったみたい。嫌われちゃったかなあって沈んだ気持ちを認めたくなくて、そんな現実を受け入れられなくて君を探して歩き、世界を旅していると、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を倣っているようで、あの哀れな怪物に自分を重ねると心がフッと楽になった。この胸に灯る思いこそが愛なのだよね、って君に問うたら微笑んで、微笑んで頷いてくれるかなあ。君に出会えたら全てを許して、君も僕を許して、少し歪んでしまった僕らの関係だけど、また手を繋いで歩ける気がするんだ。まあ、『フランケンシュタイン』で再会を果たした怪物は、創造主であるヴィクター博士に存在を否定され拒絶され根底から希望を剥奪されてしまうのだから、きっと僕も拒絶されてしまうのだろうね。継ぎ接ぎだものね。怪物だものね。それでも会いたいと願ってしまうのは何故なのだろう。破滅願望がそうさせるのか。そうなんだろうな、そうなんだろうなと、叶わぬ愛を歌って過ごしている。君を探して。