『ある晩のできごと』

 くだらぬ生き方のようですが、これは僕が望んだことであり、だから受け入れるしかないのです。

 

 人生の大先輩であられるところの我が保護者様は、「もったいない、いつか後悔するぞ」と無為に生きる僕に有難いご高説をのたまい勝手に感情移入してくれるのだが、僕としちゃあんまり面白くないものだから、「へーっ」てな感じで会話を早々に切り上げようとする。そんな態度に保護者様はため息、ってどうでもいい、どうでもよすぎる文章だよなあ。こんなことを書きたいわけじゃないんだ。

 

 近頃、自分から沸き起こる感情に整理がつかなくなってきた。ひどく冷めた気分なのに落ち着かない感じがして、深夜をうろうろ徘徊していたりする。何かを探すわけでもなく、アテがあるわけでもなく、ウロウロ、ウロウロ。うわぁ僕は何をやっているんだろう、こんな無益なことを一生続けながら死んでいくのかって、突然の物哀しさに襲われ、それなら次通りかかった自動車に轢かれてしまおうと、さっさと人生終わらせてしまおうと、衝動的に車道へ飛び出してみたりもする。

    結局、すんでのところでへたれ込み死ぬには至らなかったが、いま死のうとしていたのか、他人様に迷惑をかける方法で死のうとしていたのか、と滂沱の涙を流す姿を通行人に晒してしまった。とても正常と言えない精神になってしまった。情けないな。生き恥とはまさに僕のことではないか。

    ひとしきり泣き終わると落ち着きを取り戻した僕は、惨めを抱えて帰路を辿り、その間ずっと自戒自戒自戒の文言を唱え続けたとさ。

 

ぼくはだめなにんげんです

それを披歴してはなりません。

ぼくはしんだほうがましなにんげんです

それを吹聴してはなりません。

ぼくはいきるかちがないにんげんです

それを露見させてはなりません。

 

めでたしめでたし